今こそ知っておこう!あなたのまちの伝統的工芸品!Vol.12奈良県編

この記事では全国各地に存在する、全241品目(※2023年10月26日時点)の伝統的工芸品を都道府県ごとに紹介する連載シリーズです。いきなり全241品目に目を通すのは大変だと思うので、まずは自分の地元の伝統的工芸品を知るところから始めてみるのはどうでしょう。

第12回は奈良県編!それでは早速見ていきましょう!

この記事の目次

経済産業省が指定する伝統的工芸品とは

地元の伝統的工芸品を知る前に、「伝統的工芸品とは何か」というところから説明していきます。

まず、「伝統工芸品」とは長年受け継がれている技術や技法を用いて作られた工芸品のことをいいます。その数は各都道府県で指定されているものだけでも1,300品目を超えています。指定に統一のルールはなく、各自治体が独自のルールを設けて指定しています。一方「伝統”的”工芸品」とは昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。

詳しくは第1回の北海道編で紹介していますので、そちらをご覧ください。

奈良県の土地特性

奈良県は北西部、東部、南部の3つのエリアに分けられます。周囲を山地に囲まれた盆地で、海に面していない県です。1998年(平成10年)には「古都奈良の文化財」と呼ばれる8つの資産が世界遺産に登録され、貴重な自然と文化遺産を守ってきました。

カエルくん

奈良県には東大寺や法隆寺など、日本を代表する文化財が残されているね!

経済産業省が指定する奈良県の伝統的工芸品

奈良県には高山茶筌(たかやまちゃせん)、奈良筆(ならふで)、奈良墨(ならすみ)の3品目があります。奈良時代に平城京が置かれ、約70年間日本の首都として栄えました。筆や墨など、朝廷や大寺などの都の需要に応じたものが伝統的工芸品として受け継がれているのが特徴です。

高山茶筌(たかやまちゃせん)

出典:お茶のほんぢ園|https://www.honjien.co.jp/

奈良県の高山は、日本で唯一の茶筌の産地です。室町時代中期に高山宗砌(たかやまそうぜい)が、わび茶の祖といわれる村田珠光(むらたじゅこう)に依頼されて作ったのが高山茶筌といわれています。茶筌の製法は家臣16名が秘伝として守り続けたことで、現在に至ります。

主な産地

告示

技術・技法
1「小割り」は、小刀を用いて浅く割った後、竹の繊維に沿って手で裂くこと。
2穂の仕上げは、「味削り」、「しごき」及び「面伏せ」をすること。
原材料
1使用する竹材は、ハチク、クロチク、又はマダケとすること。
2使用する糸は、木綿糸とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0625/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

1975年5月10日

奈良筆(ならふで)

奈良県|https://www.pref.nara.jp/

奈良の筆作りは、今から約1200年前に遣唐使として唐に渡った空海が、大和国の坂名井清川 (さかないのきよかわ)に製法を伝授したことが始まりといわれています。奈良は多くの寺院が存在した為に写経などの需要が高く、筆や墨の消費が多かったことから、この地で生産が盛んに行われるようになりました。

主な産地

告示

■技術・技法
1もみがらの灰を用いて火のしかけ及び毛もみをすること。
2「平目」をした後、「分板」を用いる寸切りをすること。
3混毛は、「練りまぜ」によること。
4「おじめ」には、麻糸を使用すること。
■原材料
1穂の素材は、ヤギ、ウマ、タヌキ、イタチ、シカ、ネコ、ムササビ、リス若しくはテンの毛又はこれらと同等の材質を有する獣毛とすること。
2軸の素材は、竹又は木とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/1005/

分類

文具

指定年月日

1977年10月14日

奈良墨(ならすみ)

奈良製墨組合|http://www.sumi-nara.or.jp/

墨には松脂(まつやに)を燃やして作る「松煙墨(しょうえんぼく)」と、ナタネやゴマやキリの油を燃やして採った煤(すす)から作る「油煙墨(ゆえんぼく)」があります。日本では奈良時代に松煙墨の製造が始まり、平安時代後期に中国から油煙墨が輸入されました。その後、室町時代初期に国内初の油煙墨の製造が始まり、主流になっていきました。

主な産地

告示

■技術・技法
1「墨玉」の仕上げは、足揉みした後で手揉みを行うこと。
2成型は、「型入れ(木型)成型」、「型入れ(ヘチマ皮等)成型」又は「手にぎり成型」によること。
3乾燥は、「木灰乾燥」の後、自然乾燥によること。
4仕上げは、「生地仕上げ」又は「研ぎ仕上げ」によること。
■原材料
1煤は、松煙又は菜種油、胡麻油、椿油、桐油、椰子油若しくはこれらと同等の材質を有する油から採取したものとすること。
2膠は、牛膠若しくはその他の動物の皮や骨を煮沸して抽出したもの又はこれらと同等の材質を有するものとすること。
3香料は、龍脳又はこれらと同等の材質を有するものとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/10051/

分類

文具

指定年月日

2018年11月7日

一度は行きたい関連施設

奈良県には3つの伝統的工芸品があることがわかりました。日本の伝統工芸の宝庫とも言える「正倉院」をはじめ、奈良県には伝統の源泉がたくさんあります。伝統を感じながら、日本の文化に触れてみましょう。さらに、奈良県には昔ながらの自然も残っており、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

生駒市高山竹林園

出典:生駒市高山竹林園|https://www.tikurinen.jp/

高山竹林園には、竹の生態園や日本庭園をはじめ、竹生庵(茶室)・資料館などがあります。高山茶筌制作の実演を見ることができたり、多目的広場でのお抹茶体験も実施されています。令和5年に27回目を数えた「高山竹あかり」は開催二日間で数千人が来園するなど、人気のイベントです。

翠華園

出典:翠華園|https://www.yasaburo.com/about/

糸掛けから仕上げまでを体験でき、さらに自分で作った茶筌でお抹茶を点てることが出来る「茶筌作り」、茶筌の制作過程を見学できる「茶筌制作工程見学」、親子で茶筌1本を製作する「親子体験」など、自分にあったコースを選ぶことができます。

奈良筆田中

出典:じゃらん|https://www.jalan.net/

奈良筆田中の筆作り体験工房では、奈良筆づくりの最終の工程である、筆軸くり込み・穂首仕上げを体験することができます。また、奈良筆田中では製造工程の出張実演も行っており、次世代に伝える活動を積極的に行っています。

錦光園

出典:ならわい|https://narawai.com/project/kinkoen

錦光園では、墨の解説を聞きながら、手の型・指紋が付く世界にただ一つの「にぎり墨」を作ることが出来ます。生の墨を握った瞬間の「香り」や「やわらかさ」、そして「温かさ」を体感できる貴重な工房です。

なら工藝館

出典:なら工藝館|https://nara-kogeikan.city.nara.nara.jp/

なら工藝館は、「受け継ぐ」「創作する」「開放する」の三つを基本理念とし、公共施設の整備や伝統工芸・文化・芸能の保存並びに発掘・発信等を行う施設です。常設展示室や工芸教室の他に、後継者の育成・支援を目的に平成18年から「奈良伝統工芸後継者育成研修」を開催しています。

最後に

奈良県編、いかがでしたでしょうか?
奈良県では、「JWマリオット・ホテル奈良」や「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル奈良」の誕生や、2026年に「星のや奈良監獄」の開業が予定されるなど、宿泊施設の開業が相次いでいます。奈良県に訪れた際には、ぜひ宿泊も奈良県で!伝統と現代を味わいながら、奈良の時間の流れを体感してみてはいかがでしょうか。

カエルくん

奈良公園のシカさんと友達になりたいな〜

参考サイト/文献
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