今こそ知っておこう!あなたのまちの伝統的工芸品!Vol.32長野県編

この記事では全国各地に存在する、全241品目(※2023年10月26日時点)の伝統的工芸品を都道府県ごとに紹介する連載シリーズです。いきなり全241品目に目を通すのは大変だと思うので、まずは自分の地元の伝統的工芸品を知るところから始めてみるのはどうでしょう。

第32回は長野県編!それでは早速見ていきましょう!

この記事の目次

経済産業省が指定する伝統的工芸品とは

地元の伝統的工芸品を知る前に、「伝統的工芸品とは何か」というところから説明していきます。

まず、「伝統工芸品」とは長年受け継がれている技術や技法を用いて作られた工芸品のことをいいます。その数は各都道府県で指定されているものだけでも1,300品目を超えています。指定に統一のルールはなく、各自治体が独自のルールを設けて指定しています。一方「伝統”的”工芸品」とは昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。

詳しくは第1回の北海道編で紹介していますので、そちらをご覧ください。

長野県の土地特性

長野県は北信、東信、南信、中信の4つのエリアに分けられます。日本列島のほぼ中心部、日本列島を東西に分けるフォッサマグナと中央構造線とが交わる複雑な地層の上に位置する県です。県内の約80%が山岳地帯であり、白馬や志賀高原など人気の高いスキー場があります。

カエルくん

1998年には第18回冬季オリンピックの開催地になったよ!

経済産業省が指定する長野県の伝統的工芸品

長野県には信州紬(しんしゅうつむぎ)、木曽漆器(きそしっき)、飯山仏壇(いいやまぶつだん)、松本家具(まつもとかぐ)、内山紙(うちやまがみ)、南木曽ろくろ細工(なぎそろくろざいく)、信州打刃物(しんしゅううちはもの)の7品目があります。豊かな山林資源を活かした工芸品、山林資源を手入れする道具から生まれた工芸品が特徴です。

信州紬(しんしゅうつむぎ)

出典:帯ときもの やまぐち |https://biginza.com/

信州は古くから養蚕(ようさん)が盛んで、養蚕農家が自家用の衣類を織ったのが信州紬の始まりと言われています。江戸時代に信州の各藩が養蚕を奨励したことにより、信州全体が紬の織物産地として発展していきました。

主な産地

告示

■技術・技法
1次の技術又は技法により製織されたかすり織物又はしま織物若しくはこれに類する織物とすること。
(1)先染めの平織りとすること。
(2)たて糸に使用する糸は生糸(山繭糸を含む。)、玉糸又は真綿の手つむぎ糸とし、よこ糸に使用する糸は玉糸又は真綿の手つむぎ糸とすること。
(3)よこ糸の打ち込みには、「手投杼」を用いること。
2かすり糸の染色法は、「手くくり」によること。
■原材料
使用する糸は、生糸(山繭糸を含む)、玉糸又は真綿の手つむぎ糸とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0117/

分類

織物

指定年月日

1975年2月17日

木曽漆器(きそしっき)

出典:木曽谷とりっぷ | 長野県木曽観光連盟公式サイト|https://kiso-nagano.ne.jp/

木曽漆器には「春慶塗(しゅんけいぬり)」「堆朱(ついしゅ)」「塗分呂色塗(ぬりわけろいろぬり)」の代表的な技法が3つあり、それぞれの技法によって大きく印象が変わります。木曽漆器は「日常使いの漆器」として今日まで親しまれ、現在でも木曽周辺では学校給食の器として毎日使われています。

主な産地

告示

■技術・技法
1木曽春慶にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)塗漆は、下地をせず、木地に直接精製生漆を繰り返し「すり漆」した後、精製透漆を塗布すること。
(2)木地造りは、丸太を「みかん割り」したものを「へぎほうちょう」を用いてへぎ、板物又は曲げ物に成形すること。
2木曽変わり塗(木曽堆朱)にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)下地は、生漆にさび土等を混ぜ合わせたものを繰り返し塗布することにより「堅地下地造り」をすること。
(2)上塗りは、たんぽを用いて精製ろいろ漆を置き、多種の精製彩漆を重ねて塗付した後、砥石、砥炭等を用いて「砥ぎ出し」をすること。
(3)仕上げは、「ろいろ塗」によること。
3塗り分けろいろ塗にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)下地は、生漆にさび土等を混ぜ合わせたものを繰り返し塗付することにより「堅地下地造り」をすること。
(2)上塗りは、多種の精製彩漆を用いて「塗り分け」をすること。
(3)仕上げは、「ろいろ塗」によること。
■原材料
1漆は、天然漆とすること。
2木地は、ヒノキ、カツラ若しくはトチ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0511/

分類

漆器

指定年月日

1975年2月17日

飯山仏壇(いいやまぶつだん)

出典:Creema|https://www.creema.jp/

飯山仏壇は、江戸時代に甲府から来た寺瀬重高によって、素地仏壇が作られたのが始まりだと言われています。それからずっと遅れて、越後潟町から来た鞘師屋佐七によって漆仏壇が用いられるようになったとされています。

主な産地

告示

■技術・技法
1「木地」の構造は、「本組み」による組立式であること。
2なげしは、弓形とすること。
3宮殿造りは、「肘木組物」によること。
4塗装は、精製漆を手塗りすること。
5蒔絵及び「艶出押し」による金箔押しをすること。
■原材料
1木地は、マツ、スギ若しくはホオ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
2金具は、銅若しくは銅合金又はこれらと同等の材質を有する金属製とすること。
3漆は、天然漆とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0805/

分類

仏壇・仏具

指定年月日

1975年9月4日

松本家具(まつもとかぐ)

出典:松本民芸家具|http://matsumin.com/

松本家具は、ミズメザクラや栃(とちのき)、楢(なら)や欅(けやき)などの無垢材を「組手接手(くみてつぎて)」と呼ばれる技法でつなぎ合わせて作る点に特徴を持ちます。また、タンスなどの和家具に加えて、イスなどの洋家具も作られます。

主な産地

告示

■技術・技法
1さん積みによる乾燥は、「積み替え」をすること。
2木地加工は、次のいずれかによること。
(1)たんす及び飾りだなにあっては、次のいずれかによること。
イ「わく指物」にあっては、次の技術又は技法によること。
1)わくのかまち(よこかまちを除く。)の見付け及び見込みは、それぞれ25ミリメートル以上、45ミリメートル以上とすること。
2)横ざんの見付けは、25ミリメートル以上とすること。
3)側板及び裏板に使用する板材は、無垢板とすること。この場合において、板材の厚さは、7ミリメートル以上とすること。
4)わくのかまちの接合は、たてかまちと上下のかまちとの場合にあっては三方胴付き2枚止めほぞ接ぎにより、たてかまちとよこかまちとの場合にあっては三方胴付き止めほぞ接ぎによること。
5)とびらを付ける場合には、とびらの部材の接合は、ほぞ接ぎ、かぶせ面ほぞ接ぎ、面腰ほぞ接ぎ、留型雇いさね接ぎ又は本ざねほぞ端ばめ接ぎをすること。
6)引出しを付ける場合には、引出しの部材の接合は、包み打付け接ぎ及び組み接ぎをすること。
ロ板指物にあっては、次の技術又は技法によること。
1)天板、側板、たな板及び束板に使用する板材の厚さは、22ミリメートル以上とすること。
2)裏板に使用する板材は、無垢板とすること。この場合において、板材の厚さは、7ミリメートル以上とすること。
3)天板と側板との接合は、5枚組以上の前留めあり組み接ぎ、9枚組以上の前留め組み接ぎ又は止め腰付きほぞ接ぎによること。
4)とびらを付ける場合には、とびらの部材の接合は、ほぞ接ぎ、かぶせ面ほぞ接ぎ、面腰ほぞ接ぎ、留型雇いさね接ぎ又は本ざねほぞ端ばめ接ぎをすること。
5)引出しを付ける場合には、引出しの部材の接合は、包み打付接ぎ及び組み接ぎをすること。
(2)座卓にあっては、次の技術又は技法によること。
イ天板に使用する板材は無垢板とすること。この場合において、板材の厚さは、9ミリメートル以上とすること。
ロ天わく組みの接合は、違い胴付き留めほぞ差し鯱栓打ち込みによること。
ハ天板と吸い付きざんとの接合は、あり差しとすること。
ニ天わく組みと脚との接合は、三方留め接ぎ又は矩型ほぞ差しによること。
(3)文机の木地加工は、次の技術又は技法によること。
イ天板に使用する板材は無垢板とすること。この場合において、板材の厚さは、22ミリメートル以上とすること。
ロ天板と脚との接合は、板脚にあっては腰付きびょうほぞ接ぎ割りくさび打ちにより、組脚にあっては送りあり連れ雇いさね接ぎによること。
3塗装は、次のいずれかによること。
(1)ふき漆塗にあっては、生漆を繰り返し塗付し、生漆に松煙を混ぜ合わせたものを塗付した後、精製生漆を繰り返し「すり漆」すること。
(2)一閑張漆塗にあっては、「綿引き」、「下張り」及び「布張り」をし、「さび塗」及び中塗をした後、精製漆を塗付すること。
(3)柿渋油ふき塗にあっては、柿渋及び乾性油を繰り返し塗付した後、布でみがくこと。
4金具を付ける場合には、金具の表面は、鉄製のものにあっては、松やに、白ろう及び松煙のすべてを混ぜ合わせたもの、生漆に鉄しょうを混ぜ合わせたもの又は真綿を用いて着色し、銅又は銅合金製のものにあってはみがくこと。
■原材料
1木地は、ケヤキ、ミズメ若しくはウダイカンバ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
2金具は、銅若しくは銅合金又は鉄製とすること。
3漆は、天然漆とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0612/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

1976年2月26日

内山紙(うちやまがみ)

内山紙協同組合|http://www.uchiyama-gami.jp/index.html

江戸時代に内山村の萩原喜右ヱ門が美濃の国で製法を持ち帰り、自家で漉いたのが始まりと言われています。日焼けしにくく丈夫であることから、障子紙の代名詞となっているほどです。

主な産地

告示

■技術・技法
1原皮は、「凍皮」及び「雪ざらし」をすること。
2抄紙は、次の技術又は技法によること。
(1)「流し漉き」によること。
(2)簀は、竹製のものを用いること。
(3)「ねり」は、トロロアオイを用いること。
3乾燥は、「板干し」又は「鉄板乾燥」によること。
■原材料
原料は、コウゾとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0901/

分類

和紙

指定年月日

1976年6月2日

南木曽ろくろ細工(なぎそろくろざいく)

出典:Google Arts & Culture|https://artsandculture.google.com/?hl=ja

南木曽ろくろ細工は、厚い板や丸太をろくろで回転させながらカンナで挽いて形を削り出す伝統技術を用います。木曽の豊かな森林から採れる名木の自然の美しさを活かした工芸品であることが特徴です。

主な産地

告示

■技術・技法
1木取りは、寸決め、玉切り、墨付け及び挽き割りをした後、荒挽きをすること。
2乾燥は、割れ止め及び外気ならしをすること。
3仕上げは、次のいずれかによること。
(1)白木製品にあっては、次の技術又は技法によること。
イ粗仕上げかんなを用いて縦ろくろによる縁挽き及び粗仕上げ挽きをすること。
ロ仕上げかんな及びシャカかんなを用いて縦ろくろによる仕上げ挽きをし、仕上げ磨きをした後、トクサ及び「スグキワラ」を用いて「水磨き」をすること。
(2)漆拭き製品にあっては、次の技術又は技法によること。
イ粗仕上げかんなを用いて縦ろくろによる縁挽き及び粗仕上げ挽きをすること。
ロ仕上げかんな及びシャカかんなを用いて縦ろくろによる仕上げ挽きをし、仕上げ磨きをした後、生漆を用いて漆拭きをすること。
■原材料
1木地は、トチ、ケヤキ、セン、カツラ若しくはミズメ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
2漆は、天然漆とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0613/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

1980年3月3日

信州打刃物(しんしゅううちはもの)

出典:信濃町多言語観光サイト|https://shinanomachi-nagano.jp/jp/index.html

戦国時代の川中島の合戦の時に、武具の刀剣類の製造・修理のために多くの鍛冶職人が北信濃へと移住してきました。この時、職人から鍛冶技術を学んだ里人が農具や山林道具を作り始めたことが始まりだと言われています。

主な産地

告示

■技術・技法
1成形は、刃物鋼を炉で熱し、鎚打ちによる打ち延ばし及び打ち広げをすることにより行うこと。
2鎌は、片刃とすること。
3鎌にあっては、「樋」、「芝付け」及び「つり」を、片刃鉈にあっては、「樋」を付けること。
4焼入れは、「泥塗り」を行い急冷すること。
5「刃付け」、「研ぎ」及び「仕上げ」は、手作業によること。
■原材料
1使用する素材は、鉄及び炭素鋼とすること。
2柄は、木製とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0707/

分類

金工品

指定年月日

1982年3月5日

一度は行きたい関連施設

長野県には7つの伝統的工芸品があることがわかりました。豊かな山林資源を活かした工芸品や、この地が武田信玄と上杉謙信が戦った「川中島の戦い」の舞台であったことが、長野県の伝統的工芸品の誕生に大きな影響を与えていました。それでは長野県で伝統工芸を体験できる施設を見ていきましょう!

小岩井紬工房

出典:うえだトリップなび|https://ueda-kanko.or.jp/

1948年(昭和23年)に織元として創業した小岩井紬工房では、工房見学や花瓶敷織り体験、上田紬の反物や小物の購入ができます。体験の他に、上田紬のストールや着物・帯を織るプログラムも行っています。

木曾くらしの工芸館

出典:道の駅木曽ならかわ・木曾くらしの工芸館|https://kiso.or.jp/

「道の駅木曽ならかわ」にある木曾くらしの工芸館では、漆器の販売や、漆のことが一気にわかる特設展示、木曽堆朱塗りの研ぎ出し体験を行うことができます。他にも地酒・ワインや地元の農産物、蕎麦など「この場所ならでは」を楽しむことができます。

内山手すき和紙体験の家

出典:じゃらん|https://www.jalan.net/

ハガキやうちわなどの簡単な製作体験をはじめ、和紙の原料である楮(こうぞ)の皮を木槌で叩き、水に溶かしてネリと混ぜ合わせ紙を漉く「かずはたき体験」、竹の簀を使用して日本独特の流し漉き技法で紙漉きを体験する「流し漉き体験」など本格的な体験まで行うことができます。

松本ホテル花月

出典:松本ホテル花月【公式】|https://matsumotohotel-kagetsu.com/

松本ホテル花月は、1887年(明治20年)創業の民藝精神が息づく松本らしいホテルです。「民藝に泊まる」体験を通じて、松本に根付く歴史や文化を感じることができます。また、国宝・松本城まで徒歩5分の立地です。

最後に

長野県編、いかがでしたでしょうか?
和と洋が絶妙に調和した松本家具をはじめ、民藝が根付く松本では、都会では決して感じることのできない空気感や時間の流れを感じることができるでしょう。ぜひ一度訪れてみてください!

カエルくん

最近では大自然を生かしたサウナが人気で、全国からサウナーが集まるんだって!

参考サイト/文献
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