今こそ知っておこう!あなたのまちの伝統的工芸品!Vol.26埼玉県編

この記事では全国各地に存在する、全241品目(※2023年10月26日時点)の伝統的工芸品を都道府県ごとに紹介する連載シリーズです。いきなり全241品目に目を通すのは大変だと思うので、まずは自分の地元の伝統的工芸品を知るところから始めてみるのはどうでしょう。

第26回は埼玉県編!それでは早速見ていきましょう!

この記事の目次

経済産業省が指定する伝統的工芸品とは

地元の伝統的工芸品を知る前に、「伝統的工芸品とは何か」というところから説明していきます。

まず、「伝統工芸品」とは長年受け継がれている技術や技法を用いて作られた工芸品のことをいいます。その数は各都道府県で指定されているものだけでも1,300品目を超えています。指定に統一のルールはなく、各自治体が独自のルールを設けて指定しています。一方「伝統”的”工芸品」とは昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。

詳しくは第1回の北海道編で紹介していますので、そちらをご覧ください。

埼玉県の土地特性

埼玉県は大きく秩父、北部、西部、中央、東部の5つのエリアに分けられます。関東平野の西部にある内陸県で、秩父山地の険しい高地帯と、中央・東部の低地帯で構成されています。県人口は約730万人で東京都、神奈川県、大阪府、愛知県についで全国5位です。

カエルくん

埼玉県を舞台にした「飛んで埼玉」は興行収入約38億円の大ヒット!!

経済産業省が指定する埼玉県の伝統的工芸品

埼玉県には江戸木目込人形(えどきめこみにんぎょう)、春日部桐箪笥(かすかべきりたんす)、岩槻人形(いわつきにんぎょう)、秩父銘仙(ちちぶめいせん)、行田足袋(ぎょうだたび)の5品目があります。江戸へ直結する街道整備がもたらした地場産業が発展し誕生した工芸品であることが埼玉県の特徴です。

江戸木目込人形(えどきめこみにんぎょう)

出典:日本の伝統工芸品 総合サイト|https://www.japan-kogei.com/

木目込人形は、京都の上賀茂神社に仕えていた高橋忠重が作った人形が始まりだと言われています。当初は賀茂人形と呼ばれていましたが、木彫りの人形に衣装地を木目込んで作られたことから「木目込人形」と呼ばれるようになりました。

主な産地

告示

■技術・技法
1素地造りは、次の技術又は技法によること。
(1)頭造りは、次のいずれかによること。
イ「桐塑頭」にあっては、「地塗り」、「置き上げ」、「中塗り」、及び「切り出し」をした後、5回以上の「上塗り」をすること。
ロ「素焼き頭」にあっては、「中塗り」及び「切り出し」をした後、5回以上の「上塗り」をすること。
(2)胴体造りは、「素地みがき」をした後、「地塗り」及び「筋彫り」をすること。この場合において、「ヌキ」は、「桐塑」とすること。
(3)手足造りは、「地塗り」、「中塗り」及び「切り出し」をした後、5回以上の「上塗り」をすること。この場合において、「ヌキ」は、「桐塑」とすること。
2着付けは、筋みぞにのりづけをした後、目打ちを用いる「合わせ目」又は「重ね目」による木目込みをすること。この場合において、のりは、寒梅粉とすること。
3面相描きは、面相筆を用いて「目入れ」、「まゆ毛描き」及び「口紅入れ」をすること。
4毛吹きは、「スガ整え」をした後、「スガ吹き」をすること。この場合において、髪型は、「結上げ」、「割毛」又は「禿」とすること。
■原材料
1「桐塑」に使用する用材は、キリとすること。
2「素焼き頭」に使用する粘土は、白雲土又はこれと同等の材質を有するものとすること。
3着付けに使用する生地は、絹織物、綿織物又はこれらと同等の材質を有するものとすること。
4髪に使用する糸は、絹糸とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/1302/

分類

人形・こけし

指定年月日

1978年2月26日

春日部桐箪笥(かすかべきりたんす)

出典:春日部市|https://www.city.kasukabe.lg.jp/index.html

春日部桐箪笥は、江戸時代に日光東照宮の造営で集まった職人等が日光街道の宿場町である春日部に移り住み、周辺で採れるキリの木を材料として生産を始めたのが始まりだと言われています。

主な産地

告示

■技術・技法
1乾燥は、自然乾燥によること。
2使用する板材は、無垢板とすること。この場合において、板材の厚さは、天板、側板及びたな板にあっては19ミリメートル以上、束板にあっては10ミリメートル以上、地板、裏板及び引出しの底板にあっては7ミリメートル以上とすること。
3側板に対する天板及び地板の接合は、5枚組以上の組み接ぎ又は11枚組以上のあり組み接ぎ若しくは包みあり組み接ぎにより、たな板の接合は、小孔ほぞ接ぎによること。
4引出しの部材の接合は、包み打付け接ぎ、組み接ぎ又はあり組み接ぎによること。
5とびら又は引戸を付ける場合には、次の技術又は技法によること。
(1)板物にあっては、板材の厚さは、24ミリメートル以上とし、芯材の枠の接合は、平留め接ぎによること。
(2)枠物にあっては、板材の厚さは、枠の部材にあっては20ミリメートル以上、戸板にあっては、8ミリメートル以上とし、枠の部材の接合は、平留め接ぎ又は留形やといざね接ぎによること。
6側板と足との接合には、「足くぎ」を用いること。
7仕上げは、うずくりを用いるみがき及びやしゃぶし着色をした後、ろうみがきをすること。
■原材料
1木地は、キリとすること。
2くぎは、ウツギ製又はこれと同等の材質を有するもとすること。
3金具は、銅、銅合金又は鉄製とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0607/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

1979年8月3日

岩槻人形(いわつきにんぎょう)

提供:さいたま市|https://www.city.saitama.lg.jp/

岩槻人形の生産が始まったのは、雛祭りが庶民の間にも広まり出した江戸時代末期と言われています。幕末には、岩槻藩の専売品に指定されるほど重要な産業になり、次第に全国に知れ渡るようになりました。

主な産地

告示

■技術・技法
1「頭造り」は、次の技術又は技法によること。
(1)「木彫頭」にあっては、彫刻刀を用い「荒削り」及び「小作り」を行うこと。
(2)「木彫頭」及び「桐塑頭」にあっては、「地塗り」、「置き上げ」、「中塗り」及び「切り出し」をした後、三回以上の「上塗り」をすること。
2「胴造り」は、次の技術又は技法によること。
(1)「藁胴」にあっては、「藁胴寸法切り」をした後「台紙取付」、「足板及び脚付け」及び「腕取付け」をすること。この場合、膠又はこれと同等のもので接着し、固定すること。
(2)「木胴」にあっては、鋸、小刀又はのみを用いて「溝彫り」をした後、「台紙取付」、「足板及び脚付け」及び「腕取付け」をすること。この場合、膠又はこれと同等のもので接着し、固定すること。
3「手足造り」は、次の技術又は技法によること。
(1)木彫りの手足にあっては、彫刻刀を用い「荒削り」及び「小作り」を行うこと。
(2)桐塑の手足にあっては、「地塗り」、「中塗り」及び「切り出し」をした後、三回以上の「上塗り」をすること。
4「台付け」をする場合は、胴から足裏まで貫通した鉄線を用いて固定すること。
5「面相描き」は、面相筆、毛描き筆及び点付筆を用いて、「まつげ描き」、「まゆ毛描き」、「毛描き」及び「口紅入れ」をすること。
6雛人形の「髪付け」にあっては、小刀を用いて「毛彫り」をした後、絹糸を「植え付け」すること。この場合において、髪型は、「結上げ」又は「鬢かけ」とする。また、五月人形及び浮世人形の「髪付け」にあっては、「前貼り」及び「横貼り」をした後、「吹き返し」をすること。
7「衣裳付け」にあっては、襟を膠又はこれと同等の材質を有するもので接着し、胴の前後左右の中心にまっすぐ乗せること。
8「肉付け」にあっては、胸に綿や厚手の和紙を用い、脹らみを付けること。
9衣裳の「裂地」に裏打ちをする場合は、和紙を用い、「袋貼り」によること。
■原材料
1木彫り又は桐塑に使用する用材は、キリ、ヒノキ、ホオ又はこれと同等の材質を有するものとすること。
2衣裳に使用する生地は、絹又は綿織物とすること。
3髪に使用する糸は、絹糸とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/1303/

分類

人形・こけし

指定年月日

2007年3月9日

秩父銘仙(ちちぶめいせん)

出典:秩父市|https://www.city.chichibu.lg.jp/

秩父は、山地に囲まれ稲作に向かないことから養蚕業が盛んな地域でした。規格外の繭を使い「太織(ふとおり)」と呼ばれる野良着を生産していました。太織は「鬼秩父」とも呼ばれるほど丈夫で江戸っ子に広まり評判になり、その後「秩父銘仙」と名前を変えておしゃれ着として普及していきました。

主な産地

告示

■技術・技法
1 無地銘仙及び縞銘仙にあっては、次の技術又は技法により製織された織物とすること。
(1) 先染めの平織りとすること。
(2) 糸の精練及び染色は浸染によること。
(3) よこ糸の打ち込みには、「手投杼(ひ)」若しくは「踏木による飛杼(ひ)」又は有杼(ゆうひ)織機を用いること。
2 模様銘仙にあっては、次の技術又は技法により製織された織物とすること。
(1) 平織りとすること。
(2) 糸の精練及び染色は浸染によること。
(3) たて糸は、仮織りした後、「解(ほぐ)し捺染(なつせん)」を行うこと。
(4) よこ糸の打ち込みには、「手投杼(ひ)」若しくは「踏木による飛杼(ひ)」又は有杼(ゆうひ)織機を用いること。
(5) 製織は、「解(ほぐ)し織り」によること。
■原材料
使用する糸は、生糸、玉糸若しくは真綿のつむぎ糸又はこれらと同等の材質を有する絹糸とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0107/

分類

織物

指定年月日

2013年12月26日

行田足袋(ぎょうだたび)

出典:行田おもてなし観光局|https://www.gyoda-kankoukyoukai.jp/

行田市は利根川と荒川の間に位置しており綿花や藍の栽培が盛んに行われていたこと、江戸日本橋と京都を繋ぐ中山道が近くにあったことから、足袋作りが発展していきました。行田市はかつて全国生産の約80%を占めていました。

主な産地

告示

■技術・技法
1縫製は、次の技術又は技法によること。
(1)「爪縫い」は、爪先部分の甲と底を縫い合わせること。この場合において、指の収まりがよくなるよう、ふくらみをつけながら立体的に縫い合わせること。
(2)「廻し」は、爪先以外の甲と底を縫い合わせること。この場合において、「オヤ」及び「ヨツ」の表地及び裏地を指先で固定しながらずれないように縫い合わせること。
2「仕上げ」は、「チャセン」、「ツッコミ棒」及び「カエシ棒」を用いて裏側から表側に返した後、「ボッキ」、ヘラ、木槌(きづち)及び仕上げ台を用いて形を整えること。
■原材料
1生地の素材は、木綿とすること。
2コハゼは、真鍮若しくはアルミ又はこれらと同等の材質を有するものとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0300/

分類

その他繊維製品

指定年月日

2019年11月20日

一度は行きたい関連施設

埼玉県には5つの伝統的工芸品があることがわかりました。日光街道や中山道をはじめ古くから交通の要衝となったことで、地場産業・伝統工芸が発展してきました。埼玉県で伝統的工芸品を見学・体験できる施設をご紹介します。

岩槻人形博物館

岩槻人形博物館は、2020年開館した日本初の公立の人形専門博物館です。人形作りの工程を紹介する展示や人形に関連する道具・資料を見ることができます。また、展覧会も定期的に行われています。

ショップ旅彩ぷらざ

出典:旅彩ぷらざ|https://kimekomi-doll.shopinfo.jp/

ショップ旅彩ぷらざでは、江戸木目込み人形作り体験講座が開かれています。10種類以上の布から人形に使う布を選びながら、自分だけのオリジナル人形を作ることができます。

ちちぶ銘仙館

出典:ちちぶ銘仙館|https://www.meisenkan.com/

ちちぶ銘仙館は秩父織物・銘仙等に関する資料の保存や展示、伝統的技術を継承することを目的として設置された施設です。館内には糸繰室(いとくりしつ)や整経場、捺染室(なっせんしつ)などの展示ブース、型染め体験や手織り体験、藍染体験ができる体験ブース、秩父の織元の製品を購入できる販売ブースがあります。

足袋とくらしの博物館

出典:じゃらん|https://www.jalan.net/

足袋とくらしの博物館は牧野本店という足袋屋さんの工場でしたが、2005年に工場の面影をほぼそのまま残し博物館として生まれ変わりました。毎月第二日曜には「My 足袋づくり」を体験することができます。

最後に

埼玉県編、いかがでしたでしょうか?
埼玉県には普段の生活ではなかなか接点を持ちづらい伝統的工芸品が多いですが、一度触れると土地や歴史に根付いている身近な工芸品であったことに気がつきます。昔の人々の生活をイメージしながら、時代の流れを体感できるのも伝統的工芸品の魅力ですね!

カエルくん

「細川紙」を漉く技術は1978年(昭和53)に国の重要無形文化財に指定されたんだ!

参考サイト/文献
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