【南風原花織とは?】沖縄本島南部に咲く、立体感あふれる色彩文様の織物を徹底解説|特徴・歴史・工程までわかる決定版

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南風原花織とは?

南風原花織(はえばるはなおり)は、沖縄県南風原町(はえばるちょう)を主産地とする伝統的な織物です。緯糸に色糸を挿入して文様を浮かび上がらせる浮き織の技法を用い、立体感と色彩に富んだ模様が特徴です。文様は主に幾何学的な花柄を中心に構成され、色と配置の組み合わせによって華やかさと深みを生み出します。

かつては王族・士族の装束として用いられた格式ある織物であり、現在では着尺・帯・小物など、さまざまな形で生活の中に息づいています。

品目名南風原花織(はえばるはなおり)
都道府県沖縄県
分類織物
指定年月日2017(平成29)年1月26日
現伝統工芸士登録数(総登録数)
※2024年2月25日時点
5(5)名
その他の沖縄県の伝統的工芸品知花花織、久米島紬、宮古上布、読谷山花織、壺屋焼、琉球絣、琉球漆器、与那国織、八重山ミンサー、喜如嘉の芭蕉布、八重山上布、首里織、読谷山ミンサー、琉球びんがた、三線(全16品目)

南風原花織の産地

沖縄本島南部・南風原町に根ざした花織の里

主要製造地域

南風原花織の産地である南風原町は、沖縄本島南部の内陸に位置し、那覇市と隣接する交通利便性の高い地域です。南国特有の温暖で湿潤な気候は植物染料の発色や乾燥工程に適しており、織物づくりに恵まれた自然条件を備えています。

この地では、古くから農作業の合間に女性たちが機織りを行う文化が根づいており、生活の知恵として織物技術が発展しました。歴史的には琉球王府に献上される御用布としての役割も担っており、格式高い布として重用されてきました。こうした背景が現在の花織文化の土壌となり、町内には技術を継承する織元や工房が集積しています。

南風原花織の歴史

王府文化を映す織物、復興から再び脚光へ

南風原花織は、琉球王府時代に王族や士族の衣装として織られていた花織の一系統です。精緻な模様と華やかな色彩が特徴で、沖縄本島南部の織物として高い評価を受けています。

  • 18世紀:琉球王国時代、王族・士族階級の衣装に南風原花織が用いられる。
  • 1879年(明治12年):琉球処分により王府が廃止され、花織の需要が激減。
  • 1910年代:一部の家庭で技術継承が試みられるが衰退が続く。
  • 1975年:南風原町で地元有志による復元活動が開始される。
  • 1986年:南風原花織保存会が結成され、本格的な保存・普及活動が展開。
  • 2017年(平成29年):南風原花織が経済産業大臣より「伝統的工芸品」に指定される。

南風原花織の特徴

浮き織で咲かせる、色と立体の文様

南風原花織の最大の特徴は、「浮き織(うきおり)」と呼ばれる技法によって、文様部分の緯糸を浮かせて立体的な模様を表現する点です。彩色された緯糸を図案に合わせて挿入することで、文様が布の表面にくっきりと浮き上がります。

文様は、赤・黄・青・緑などの明快な色彩を用いた菱形や正方形、十字形などの幾何学模様が多く、配置や配色によって表情が変化します。立体感と色彩の組み合わせが、南国らしい華やかさと奥行きを生み出しています。

南風原花織の材料と道具

南風とともに染め織る、自然由来の素材たち

南風原花織の製作には、天然繊維と自然由来の染料が多く用いられ、織りの各工程は熟練の職人による手作業で行われます。

南風原花織の主な材料類

  • 綿糸・絹糸:布の目的に応じて使い分けられる。
  • 天然染料:藍・福木・茜などの植物由来染料。

南風原花織の主な道具類

  • 高機(たかばた):水平型の手織り機。
  • 桶・染色用具:糸の染色に使用。
  • 漉し器具・補助具:模様挿入時に使用される。

素材や染料は南国の自然と深く結びついており、風土に育まれた色合いと質感が、織物に独自の風情を与えています。

南風原花織の製作工程

一糸一文様、丁寧に積み重ねる織りの工程

南風原花織の製作は、糸の準備から染色、整経、図案設計、そして浮き織による模様の織り出しまで、数多くの工程を経て完成します。

  1. 糸の準備
    綿糸や絹糸を精練し、糊付けを行う。
  2. 染色
    色ごとに天然染料で糸を染め分ける。
  3. 整経
    経糸を巻き取り、織機に合わせて配置。
  4. 図案設計
    模様の配置・色の組み合わせを図案化。
  5. 機セット
    経糸を織機に張り、緯糸の準備をする。
  6. 織り
    模様部分で色糸を浮かせる浮き織技法で織り進める。
  7. 仕上げ
    洗い・糊落とし・天日干しで整える。

一つ一つの模様が、織り手の技術と集中力によって生まれる工程は、南風原花織の魅力そのものです。

南風原花織は、沖縄の自然と歴史、そして南風原町の人々の暮らしから生まれた、彩り豊かな伝統的工芸品です。浮き織の技法が描き出す立体的な模様は、視覚に鮮やかな感動をもたらし、現代の生活の中でも帯やインテリアとして活用されています。伝統を守りながら新たな息吹を織り込むこの織物は、南風のようにしなやかで、力強い魅力を放ち続けています。

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