今こそ知っておこう!あなたの地元の伝統的工芸品!Vol.29神奈川県編

この記事では全国各地に存在する、全241品目(※2023年10月26日時点)の伝統的工芸品を都道府県ごとに紹介する連載シリーズです。いきなり全241品目に目を通すのは大変だと思うので、まずは自分の地元の伝統的工芸品を知るところから始めてみるのはどうでしょう。

第29回は神奈川県編!それでは早速見ていきましょう!

この記事の目次

経済産業省が指定する伝統的工芸品とは

地元の伝統的工芸品を知る前に、「伝統的工芸品とは何か」というところから説明していきます。

まず、「伝統工芸品」とは長年受け継がれている技術や技法を用いて作られた工芸品のことをいいます。その数は各都道府県で指定されているものだけでも1,300品目を超えています。指定に統一のルールはなく、各自治体が独自のルールを設けて指定しています。一方「伝統”的”工芸品」とは昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。

詳しくは第1回の北海道編で紹介していますので、そちらをご覧ください。

神奈川県の土地特性

神奈川県は川崎エリア、横浜エリア、横須賀三浦エリア、湘南エリア、県央エリア、県西エリアの6つのエリアに分けられます。県西エリアは箱根町や湯河原町などの山々に囲まれた温泉地帯横浜エリアは日本有数の大都市です。横須賀三浦エリアにより東は東京湾、西は相模湾に分けられます。

カエルくん

神奈川県の人口は約900万人で、東京都に次いで全国2位なんだ!

経済産業省が指定する神奈川県の伝統的工芸品

神奈川県には鎌倉彫(かまくらぼり)、箱根寄木細工(はこねよせぎざいく)、小田原漆器(おだわらしっき)の3品目があります。箱根山や丹沢などから採れる森林資源を原材料にした工芸品が特徴です。

鎌倉彫(かまくらぼり)

出典:鎌倉市ホームページ|https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/index.html

鎌倉彫は、鎌倉時代に中国から伝わった彫漆の一種である堆朱(ついしゅ)や堆黒(ついこく)などの影響を受けた仏師が、木彫漆塗りの技法で仏具を作ったのが始まりと言われています。室町時代には茶の湯の興隆とともに茶道具が作られ普及していきました。

主な産地

告示

■技術・技法
1木地造りは、次のいずれかによること。
(1)挽き物にあっては、ろくろ台及びろくろがんなを用いて成形すること。
(2)指物にあっては、「留付け」及び「際取り」をすること。
(3)板物にあっては、「荒削り」及び「仕上げ削り」をすること。
(4)刳り物にあっては、「荒刳り」及び「仕上げ削り」をすること。
2彫刻は、次のいずれかによること。
(1)薄肉彫にあっては、「たちこみ」をした後、「際取り」、「地透き」、「こなし」又は「刀痕」をすること。
(2)刀痕彫にあっては、「重ね刀痕」、「流し刀痕」又は「石目刀痕」によること。
3下地造りは、次の技術又は技法によること。
(1)木地固めは、生漆又は生漆に米のりを混ぜ合わせたものを塗付すること。
(2)下地付けは、次のいずれかによること。
イ蒔下地にあっては、生漆を塗付した後、炭粉又は砥の粉を蒔き付けること。
ロさび下地にあっては、生漆に砥の粉を混ぜ合わせたものを繰り返し塗付すること。
ハ地塗り下地にあっては、生漆を繰り返し塗付すること。
4中塗は、黒中塗漆を塗付した後、研ぎをすること。
5上塗は、次のいずれかによること。
(1)彩漆塗にあっては、朱漆、べンガラ漆、石黄漆、緑漆又は黒漆を塗付すること。
(2)乾口塗にあっては、朱漆、ベンガラ漆、石黄漆、緑漆又は黒漆を塗付した後、まこも又はすす玉を用いて「乾口取り」及び「乾口研ぎ」をすること。
(3)蒔塗にあっては、透漆に顔料を混ぜ合わせたものを塗付した後、顔料蒔き又は乾漆粉蒔きをすること。この場合において、顔料は、銀朱、ベンガラ又は石黄とすること。
(4)堆紅塗にあっては、朱漆を繰り返し塗付した後、研ぎ出しをすること。
(5)堆烏塗にあっては、ろいろ漆にベンガラを混ぜ合わせたものを繰り返し塗付した後、研ぎ出しをすること。
(6)堆金塗にあっては、朱漆を塗付し、金箔押しをした後、透漆を塗付し、研ぎ出しをすること。
(7)ろいろ塗にあっては、ろいろ漆を塗付しては研ぎをすることを繰り返すこと。
(8)はけ目塗にあっては、絞漆を塗付すること。
■原材料
1漆は、天然漆とすること。
2木地は、カツラ、ホオ、イチョウ、ヒノキ、サワラ、トチ、ケヤキ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0507/

分類

漆器

指定年月日

1979年1月12日

箱根寄木細工(はこねよせぎざいく)

出典:露木木工所|https://www.yosegi-g.com/

箱根町の畑宿では戦国時代から、轆轤(ろくろ)を使った挽物細工が盛んでした。江戸時代後期に畑宿に住んでいた石川仁兵衛(いしかわにへえ)が、静岡で生まれた寄木細工の技術を応用し「箱根寄木細工」を考案したと言われています。

主な産地

告示

■技術・技法
1乾燥は、自然乾燥によること。
2「寄木種板」作りは、次の技術または技法によること。
(1)文様は、染色を施していない木地の組合せとすること。
(2)文様単位材作りは、「留台」、「鋸挽台」、「削り台」、片あさりの鋸、「平鉋」及び「長台鉋」を用いること。
(3)「寄せ」及び「大寄せ」をすること。
3「ズク取り」には、「大鉋」又は「セン鉋」を用いること。この場合において、「ズク」の厚さは、0.25ミリメートル以上とすること。
4指物にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)「ズク」又は寄木挽割り板を指物木地に貼付する場合には、裁断面が製品の表面に表れないこと。
(2)接合は、やといざね継ぎ、組継ぎ又はこれらと同等の仕口によること。
5挽き物にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)ろくろ台及びろくろがんなを用いて成形すること。
(2)仕上げ挽き及びトクサ磨きには、ろくろの左右両方向の回転を用いること。
6象がんで加飾をする場合には、彫り込み又は「くり抜き」によること。
7仕上げをする場合には、「ろう引き」、「すり漆」又は「木地呂塗り」によること。
■原材料
1「寄木種板」に使用する木地は、天然木とすること。
2指物「(無垢指物」を除く。)に使用する木地(「寄木種板」に使用する木地を除く。)は、スギ、ヒノキ、キリ、カツラ、ホオ、セン、キハダ、クワ、ケヤキ、クス、クルミ、コクタン、シタン、若しくはタガヤサン又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
3漆は、天然漆とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0610/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

1984年5月31日

小田原漆器(おだわらしっき)

出典:大川木工所|http://okawa-mokkoujo.com/index.html

室町時代中期に、箱根山などの豊富な森林資源を用いて轆轤挽き(ろくろびき)した木地に漆を塗ったのが始まりと言われています。木目の美しさを生かした「摺り漆塗」「木地呂塗」という技法用いるのが特徴です。

主な産地

告示

■技術・技法
1木地造りは、ろくろ台及びろくろがんなを用いて成形すること。
2塗漆は、次のいずれかによること。
(1)「摺漆塗」にあっては、水磨き仕上げをし、木地に直接精製生漆を繰り返しすり漆した後、胴擦りを行い、精製生漆に精製透つや漆を加えたものを用いて「仕上げ摺り」及び「磨き摺り」を行うこと。
(2)木地呂塗にあっては、次の技術又は技法によること。
イ下地造りは、精製生漆を用いて木地固めをし、精製生漆に砥の粉等を混ぜ合わせたものを用いて「目すり錆」をした後、水研ぎをすること。
ロ中塗は、精製透中塗漆を塗付した後、水研ぎをすること。
ハ上塗は、次のいずれかによること。
1)塗立仕上げにあっては、精製透つや漆を塗付すること。
2)ろいろ仕上げにあっては、精製透ろいろ漆又は精製なしじ漆を塗付し、「ろいろ研ぎ」及び胴擦りを行った後、精製生漆を用いるすり漆をして「ろいろ磨き」をすることを繰り返すこと。
(3)彩漆塗にあっては、次の技術又は技法によること。
イ下地造りは、精製生漆を用いて木地固めをし、精製生漆に砥の粉等を混ぜ合わせたものを用いてさび付けをした後、水研ぎをすること。
ロ中塗は、精製黒中塗漆を塗付した後、水研ぎをすること。
ハ上塗は、朱漆又は精製黒ろいろ漆を塗付すること。
ニろいろ仕上げをする場合には、「上塗研ぎ」及び胴擦りを行った後、精製生漆を用いるすり漆をして「ろいろ磨き」をすることを繰り返すこと。
■原材料
1漆は、天然漆とすること。2木地は、ケヤキ、セン、クワ若しくはトチ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0508/

分類

漆器

指定年月日

1984年5月31日

一度は行きたい関連施設

神奈川県には3つの伝統的工芸品があることがわかりました。箱根町や湯河原町の温泉地帯や、鎌倉の史跡・名勝など豊かな観光資源で知られる神奈川県。ここではそんな神奈川県で伝統工芸を体験・見学できる施設をご紹介します。

鎌倉彫鎌陽洞

出典:鎌倉彫教室鎌陽洞|https://www.kamakura-bori.co.jp/

1921年(大正10年)に開業した鎌陽洞では、「八寸丸盆コース」や「六寸勾配盆コース」の鎌倉彫体験講座を通じて鎌倉彫を体験することができます。また、もっと本格的に鎌倉彫を学びたい方向けに月に二度通いながらマンツーマンで指導を受けられる「鎌倉彫教室」も開講されています。

株式会社金指ウッドクラフト

出典:株式会社金指ウッドクラフト|https://www.kanazashi-woodcraft.com/index.html

箱根駅伝の優勝トロフィーの製作も手がける株式会社金指ウッドクラフトでは、寄木体験教室を行っています。40個の部品から組み合わせを選ぶことで、自分だけのオリジナル寄木コースターを作ることができます。

畑宿寄木会館

出典:YOSEGIZAIKU 箱根寄木細工|https://www.hakone.or.jp/yosegizaiku/

箱根寄木細工発祥の地「畑宿」にある畑宿寄木会館では、箱根寄木細工の歴史や技術を紹介する展示や販売、職人による実演を行っております。また、寄木細工のコースター作りなどの製作体験もできます。

界 箱根

出典:星野リゾート|https://hoshinoresorts.com/jp/

星野リゾートが展開する「界 箱根」では、寄木細工の秘密に迫る紙芝居を楽しめる「寄木CHAYA」をはじめ、寄木クラフト体験や箱根寄木細工職人の工房ツアーなど箱根ならではの体験を楽しむことができます。

大川木工所

出典:大川木工所|http://okawa-mokkoujo.com/index.html

大川木工所では、漆の研ぎ出し体験を行うことができます。水ペーパーを用い、世界で一つだけのオリジナルの模様の汁椀、給仕椀などを作ることができます。

最後に

神奈川県編、いかがでしたでしょうか?
ホッと一息つきたい時、箱根や湯河原を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。都会の喧騒を忘れゆっくり時間を過ごしながら、箱根山系に起源を持つ伝統的工芸品にも触れてみてはいかがでしょうか。

カエルくん

箱根、鎌倉、逗子…行きたいところが多すぎるよ…

参考サイト/文献
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