【与那国織とは?】海と大地が育んだ、日本最西端の島の織物文化を徹底解説|特徴・歴史・工程までわかる決定版

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与那国織とは?

与那国織(よなぐにおり)は、沖縄県八重山諸島の最西端に位置する与那国島で作られる伝統的な織物の総称です。島の自然素材や生活の知恵を背景に、すべての工程を手作業で行う素朴な風合いと確かな技術が魅力です。

与那国織には「ドゥタティ」「花織」「カーギ(絣)」「シダティ(縞)」の4種があり、用途や文様、織り方に応じて使い分けられてきました。かつては日常着や儀礼服、贈答品として用いられ、島の暮らしとともに発展してきた織物文化です。

品目名与那国織(よなぐにおり)
都道府県沖縄県
分類織物
指定年月日1987(昭和62)年4月18日
現伝統工芸士登録数(総登録数)
※2024年2月25日時点
5(8)名
その他の沖縄県の伝統的工芸品南風原花織、久米島紬、宮古上布、読谷山花織、壺屋焼、琉球絣、琉球漆器、喜如嘉の芭蕉布、八重山ミンサー、八重山上布、知花花織、首里織、読谷山ミンサー、琉球びんがた、三線(全16品目)

与那国織の産地

日本最西端の島が育む、島民の暮らしに根ざした布文化

主要製造地域

与那国織の主な産地は、沖縄県八重山郡与那国町。台湾にも近い与那国島は、強い風や海に囲まれた自然環境の中で、衣服の自給自足を必要とした歴史があります。織物は女性たちの重要な生活技術として根づき、家庭で代々受け継がれてきました。小規模ながらも地元の織子たちが現在も技術継承を続けています。

与那国織の歴史

暮らしの中から生まれた、島独自の織物文化

与那国織は、生活の道具として発展してきた背景から、実用性に富み、気候風土に即した工夫が随所に見られます。歴史の大きな転機や記録は少ないものの、地域文化と深く結びついて現在まで継承されています。

  • 17世紀以前:農耕と漁撈の暮らしの中で、織物技術が自給自足の生活に根づく。
  • 19世紀:島外との交易が盛んになり、与那国織の存在が周囲の島々でも知られる。 
  • 戦後〜昭和期:一時衰退するも、1970年代以降に文化保存運動の一環として再評価。
  • 1987年(昭和62年):与那国織が経済産業大臣より「伝統的工芸品」に指定される。

与那国織の特徴

シンプルさの中に宿る、手仕事の温もりと技術

与那国織の魅力は、用途に応じた4種類の織りの中に、それぞれ異なる特徴が込められている点にあります。たとえば、代表的な「ドゥタティ」は太い縞と細かい縞を交互に並べた、男性用の礼装用布で、厳かな美しさを備えています。一方「花織」には絣文様と浮き織り文様が組み合わされ、鮮やかで繊細な印象を与えます。

さらに、「カーギ」は絣糸を用いた緻密な模様が特徴で、「シダティ」は細縞を中心とした軽やかな布地。どれも素朴でありながら丁寧な仕事が光り、与那国島の風土や人々の暮らしを映すような表情を持っています。

与那国織の材料と道具

自然素材と手技が織りなす、暮らしの織物

与那国織には、自然に根ざした材料と、簡素ながらも工夫を凝らした道具が使われています。綿や芭蕉などの糸を用い、織機も小型の高機が主流で、家庭の一室でも作業が行えるよう工夫されています。

与那国織の主な材料類

  • 綿糸:素朴な風合いを出す主素材。草木染めされることもある。
  • 芭蕉糸:伝統的な植物繊維で、軽く通気性がよい。
  • 絣糸:模様を出すために染め分けた糸。

与那国織の主な道具類

  • 手織機(高機):家庭でも使える小型の織機。
  • 綛上げ道具:糸を枠に巻いて整えるための道具。
  • 筬(おさ)・杼(ひ):糸を通したり打ち込んだりする織機部品。

地元の自然に調和した素材を用い、道具も簡素ながら効率的。全工程が手作業で行われるため、ひと織りごとに作り手の息づかいが伝わってきます。

与那国織の製作工程

一人ひとりの手で積み重ねる、島の時間と技術

与那国織の製作は、糸づくりから染め、織り、仕上げに至るまで、すべてが手仕事で進められます。

  1. 糸づくり
    綿糸や芭蕉糸を精練し、織りに適した状態に整える。
  2. 染色
    必要に応じて絣模様などの染め分けを行う。草木染めも活用される。
  3. 整経(せいけい)
    織物の幅に応じて縦糸を並べる。
  4. 機上げ
    織機に糸を張り、準備する。
  5. 織り
    用途に応じた技法で手織りを行う。
  6. 仕上げ
    織り上がった布を洗って乾かし、形を整える。

ひとつの反物が仕上がるまでに、数日から数週間かかることもあり、織り手の集中力と経験が試される工程です。

与那国織は、豪華さや派手さではなく、素朴で温かみのある風合いと、暮らしに根ざした用途美が光る伝統的工芸品です。過酷な自然と向き合いながら育まれてきた布には、島人の知恵と感性が詰まっており、今なお手仕事の文化を支える象徴として息づいています。

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