今こそ知っておこう!あなたのまちの伝統的工芸品!Vol.7福島県編

この記事では全国各地に存在する、全241品目(※2023年10月26日時点)の伝統的工芸品を都道府県ごとに紹介する連載シリーズです。いきなり全241品目に目を通すのは大変だと思うので、まずは自分の地元の伝統的工芸品を知るところから始めてみるのはどうでしょう。

第7回は福島県編!それでは早速見ていきましょう!

この記事の目次

経済産業省が指定する伝統的工芸品とは

地元の伝統的工芸品を知る前に、「伝統的工芸品とは何か」というところから説明していきます。まず、「伝統工芸品」とは長年受け継がれている技術や技法を用いて作られた工芸品のことをいいます。その数は各都道府県で指定されているものだけでも1,300品目を超えています。指定に統一のルールはなく、各自治体が独自のルールを設けて指定しています。
一方「伝統”的”工芸品」とは昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。

詳しくは第1回の北海道編で紹介していますので、そちらをご覧ください。

福島県の土地特性

福島県は北海道、岩手県に次いで日本で3番目の広さを持つ県です。豊かな自然と歴史を持つ「会津地方」、四季折々の花と果物が魅力の「中通り」、太平洋に面した温暖な気候の「浜通り」と大きく3つエリアに分けられます。城下町会津若松や大内宿に代表される歴史ある街並みや日本三大桜の一つに数えられる三春滝桜などの観光スポットに、多くの観光客が訪れています。

カエルくん

会津藩のシンボル「鶴ヶ城」は日本の歴史を語る上で欠かせないよね!

経済産業省が指定する福島県の伝統的工芸品

福島県には会津塗 (あいずぬり)、大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)、会津本郷焼(あいづほんごうやき)、奥会津編み組細工(おくあいづあみくみざいく)、奥会津昭和からむし織(おくあいづしょうわからむしおり)の5つの伝統的工芸品があります。蒲生氏郷や保科正之らが養蚕、綿花栽培、漆の植栽など殖産興業に積極的に取り組み多くの名産品が誕生しました。

会津塗 (あいずぬり)

出典:東北経済産業局|https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/fukusima_01.htm

会津塗は、1590年(天正18年)に豊臣秀吉の命を受けて会津の領主となった蒲生氏郷(がもううじさと)が、前の領地であった日野(滋賀県)から木地師(きじし)や塗師(ぬりし)を呼び寄せて技法を伝授させたことが始まりと言われています。これにより会津塗の技術は飛躍的に進歩を遂げ、漆の栽培から加飾までを一貫して手がける一大産地となりました。

主な産地

告示

■技術・技法
1下地造りは、次のいずれかによること。
(1)渋下地にあっては、柿渋に炭粉、松煙又は油煙を混ぜ合わせたものを塗付しては研ぎをすることを繰り返した後、柿渋を塗付すること。
(2)さび下地にあっては、生漆に砥の粉を混ぜ合わせたものを塗付すること。
2上塗は、「花塗」、「きじろ塗」または「金虫くい塗」とすること。
3加飾をする場合には、次のいずれかによること。
(1)消粉蒔絵、平極蒔絵、丸粉蒔絵、消金地及び朱磨にあっては、金粉、銀粉、朱の粉その他の粉を蒔いた後、精製生漆を繰り返し「すり漆」すること。
(2)錦絵にあっては、雲形を描くこと。
(3)会津絵にあっては、檜垣を描いた後、ひし形の箔押しをすること。
(4)鉄さび塗にあっては、生漆にさび土等を混ぜ合わせたものを用いて絵描きをした後、地の粉及び砥の粉又はこれらにベンガラを混ぜ合わせたものを蒔いてみがくこと。
(5)色粉蒔絵にあっては、色粉を蒔いた後、ろうを付けた和紙を用いてみがくこと。
(6)沈金にあっては、「のみ」を用いて彫り、精製漆をすり込んだ後、箔押し又は粉蒔きをすること。
■原材料
1漆は、天然漆とすること。
2木地は、ホオ、トチ、ケヤキ若しくはセン又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0506/

分類

漆器

指定年月日

1975年5月10日

大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)

出典:東北経済産業局|https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/fukusima_02.htm

大堀相馬焼の特徴は「青ひび焼き」と呼ばれる細かな貫入と「走り駒」「左駒」と呼ばれる駒絵、入れた湯が冷めにくく手に持っても熱くないような「二重構造」です。窯出し時、ひびが入る際に聞こえて来る風鈴のような音は「貫入音」と呼ばれ「うつくしまの音30景」にも選ばれています。

主な産地

告示

■技術・技法
1成形は、ろくろ成形、押形成形又は手ひねり成形によること。
2素地の模様付けをする場合には、「鋲止め」、「泥塗り」、「海面」、「菊押し」、「花ぬき」、「二重」、櫛目、イッチン盛り、面とり、「さるぽ塗り」、はり付け、飛びかんな、布目又ははけ目によること。
3釉掛けは、浸し掛け、流し掛け又は塗り掛けによること。この場合において、釉薬は、「青磁釉」、「白流釉」、「灰釉」又は「あめ釉」とすること。
4絵付けをする場合には、手描きによること。
■原材料
1使用する陶土は、大堀粘土、鹿島粘土又はこれらと同等の材質を有するものとすること。
2青磁釉に使用する陶石は、砥山石又はこれと同等の材質を有するものとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0401/

分類

陶磁器

指定年月日

1978年2月6日

会津本郷焼(あいづほんごうやき)

出典:東北経済産業局|https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/fukusima_03.htm

会津本郷焼の特徴は、陶器と磁器の両方を製造している点であり、このように同時に両方の伝統を持つ産地は希少です。戦国時代に、会津若松に移封された蒲生氏郷が鶴ヶ城の屋根瓦を焼かせたのが始まりとされています。

主な産地

告示

■技術・技法
1成形は、次の技術又は技法によること。
(1)ろくろ成形、手ひねり成形又はたたら成形によること。
(2)磁器にあっては、(1)に掲げる成形方法によるほか、素地が(1)に掲げる成形方法による場合と同等の性状を有するよう、素地の表面全体の削り成形仕上げ及び水拭き仕上げをする袋流し成形又は「二重流し成形」によること。
2素地の模様付けをする場合には、印花、櫛目、はけ目、イッチン盛り、面とり、はり付け、布目、化粧掛け又は彫りによること。
3下絵付けをする場合には、線描き、つけたて、浸しつけ又はだみによること。この場合において、絵具は、「呉須絵具」、「鉄錆絵具」又は「銅絵具」とすること。
4釉掛けは、浸し掛け、流し掛け又は塗り掛けによること。この場合において釉薬は、磁器にあっては、「木灰釉」、「石灰釉」、「青磁釉」、「海鼠釉」、「鉄釉」、「銅釉」、「黄磁釉」又は「金結晶釉」、陶器にあっては、「土灰釉」、「あめ釉」、「白流し釉」、「青流し釉」、「鉄釉」、「銅釉」、「黄磁釉」、「貫入釉」又は「乳白釉」とすること。
5上絵付けをする場合には、線描き、つけたて又はだみによること。
■原材料
使用する陶土は、磁器にあっては、「大久保土」、「砂利土」、「胃土」又はこれらと同等の材質を有するもの、陶器にあっては、「的場粘土」、「大久保土」又はこれらと同等の材質を有するものとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0402/

分類

陶磁器

指定年月日

1993年7月2日

奥会津編み組細工(おくあいづあみくみざいく)

出典:東北経済産業局|https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/fukusima_04.htm

奥会津編み組細工は、全国でも有数の豪雪地帯として知られる奥会津地方で作られます。縄文時代から農閑期の副業として伝えられてきました。使用する材料によって、「ヒロロ細工」、「マタタビ細工」、「ヤマブドウ細工」の3つに大別されます。

主な産地

告示

■技術・技法
1 「ヒロロ細工」にあっては、次の技術又は技法によること。
(1) ヒロロ縄の太さは2ミリメートルから4ミリメートルとし、10センチメートルの長さに縒りが20回以上あること。
(2) 底編み及び立ち上げ編みは、「矢羽根編」又は「棚編」によること。
2 「山ブドウ細工」にあっては、次の技術又は技法によること。
(1) ヤマブドウの皮は、鞣しを十分に行い、繊維に沿って切断し、幅の調整を行うこと。
(2) 手さげ籠類の底編み及び立ち上げ編みは、「二本飛び網代編」又は「笊編」によること。
(3) 手さげ籠類の縁巻きは、「矢筈巻縁」によること。
(4) 角箱籠類の底編みは、「四つ目編」又は「二本飛び網代編」によること。立ち上げ編みは、「笊編」によること。
(5) 丸籠類の底編みは、「笊編」「四つ目編」又は「二本飛び網代編」によること。立ち上げ編みは、「笊編」又は「二本飛び網代編」によること。
3 「マタタビ細工」にあっては、次の技術又は技法によること。
(1) 材料の下ごしらえは、皮剥ぎ、割き、扱き、幅揃えを行うこと。
(2) 米研ぎ笊の底編みは、二本の材料を一組とする「二本飛び網代編」で編み、一本の材料で「二本飛び網代編」により底を丸くすること。立ち上げ編みは、「笊編」によること。
(3) 小豆漉し及び蕎麦笊の底編みは、二本の材料を一組とする「二本飛び網代編」によること。立ち上げ編みは、一本の材料で「二本飛び網代編」によること。
(4) 四つ目笊の底編みは、二本の材料を一組とする「四つ目編」によること。立ち上げ編みは、「笊編」によること。
(5) 籠類の底編みは、二本の材料を一組とする「笊編」によること。立ち上げ編みは、一本の材料で「笊編」によること。
(6) 製作後は、「寒晒」又は「雪晒」を行うこと。
■原材料
1 「ヒロロ細工」にあっては、奥会津の山間部で採取されたミヤマカンスゲ(別称 ホンヒロロ)、オクノカンスゲ(別称 ウバヒロロ)とすること。
2 「山ブドウ細工」にあっては、奥会津の山間部で採取されたヤマブドウの皮で、二枚皮になる前の一枚皮とすること。
3 「マタタビ細工」にあっては、奥会津の山間部で採取された若年の成熟したマタタビの蔓とすること。縁の芯の材料はクマゴヅル又は同等の材質を有するものとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0606/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

2003年9月10日

奥会津昭和からむし織(おくあいづしょうわからむしおり)

出典:東北経済産業局|https://www.tohoku.meti.go.jp/s_cyusyo/densan-ver3/html/item/fukusima_05.htm

奥会津昭和からむし織は、「からむし」は虫ではなく、イラクサ科の多年生の植物です。山間高冷地である昭和村では、室町時代後期から換金作物として栽培され、江戸時代にはユネスコの無形文化遺産の越後上布や小千谷縮の原料として出荷されていました。

主な産地

告示

■技術・技法
1次の技術又は技法により製織された織物とすること。
(一)原材料のからむしは、「からむし引き」を行うこと。
(二)使用する糸は、「手積み」によること。
(三)製織には、地機を用いること。
■原材料
福島県大沼郡昭和村に生育するからむしとすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0138/

分類

織物

指定年月日

2017年11月30日

一度は行きたい関連施設

福島県には5つの伝統的工芸品があることがわかりました。5つのうち4つが品目の名前に「会津」が含まれています。会津地方を中心に関連施設を見ていきましょう!

会津若松伝承館 鈴善

出典:会津若松観光ナビ|https://www.aizukanko.com/souvenir/223

鈴善は、店舗と住居、6つの蔵からなる建物群です。「会津塗伝承館」「美術蔵」「体験蔵」「漆器蔵「地酒蔵」「蔵の茶や」の6つの施設では、会津漆器産業の歴史や職人の技術を見ることができます。通り正面の建物は「髹(ぬり)の辻」として漆器蔵とともに昭和58年に新築され、第一回福島県建築文化賞、第六回会津若松市美しい会津景観賞を受賞しています。

歴史感動ミュージアム 会津武家屋敷

出典:歴史感動ミュージアム 会津武家屋敷|https://bukeyashiki.com/

会津武家屋敷は、会津藩政の歴史的建造物や遺品、体験を通して当時の歴史・文化・精神に触れることのできるミュージアムです。約7000坪の敷地に復元された会津藩家老 西郷頼母の居宅を中心に当時の暮らしを感じることができます。

道の駅 からむし織の里しょうわ

出典:株式会社奥会津昭和村振興公社|https://www.karamushi.co.jp/michinoeki.html

からむし織の里しょうわでは、からむし織体験ができる「織姫交流館」、「からむし」について知ることができる「からむし工芸博物館」、村の郷土食が味わえる「郷土食伝承館 苧麻庵などが集まっています。

なみえの技・なりわい館

出典:SEKI KUKAN SEKKEI|https://www.sopnet.co.jp/

「なみえの技・なりわい館」は、道の駅なみえ内の地場産品販売施設です。県内各地の大堀相馬焼協同組合所属窯元の作品や江戸時代から昭和初期までの貴重な作品が展示されています。また、併設した工房では、手びねり成形、絵付けを体験することができます。

若松城天守閣郷土博物館

出典:会津鶴ヶ城|https://www.tsurugajo.com/tsurugajo/tensyukaku/

鶴ヶ城は今から約630年ほど前に、葦名直盛が築いた東黒川館がはじまりと言われ、戊辰戦争では約1ヶ月に及ぶ激しい攻防戦に耐えた難攻不落の名城として、その名を天下に知らしめました。天守の内部にある、若松城天守閣郷土博物館は『歴史に秘められた「物語」をデジタル技術で体験、五感で楽しめる文化観光案内”城”』として歴史を伝えています。

最後に

福島県編、いかがでしたでしょうか?
歴史好きの方なら、福島県といえば会津若松を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。福島県の伝統的工芸品は会津地方に起源を持つものが多かったですね!歴史に紐づいている伝統的工芸品にも興味を輪を広げてみたら、新しい気づきがあるかも!

カエルくん

鶴ヶ城は、現存する天守閣では国内唯一の赤瓦の天守なんだって!

参考サイト/文献
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