今こそ知っておこう!あなたのまちの伝統的工芸品!Vol.3岩手県編

この記事では全国各地に存在する、全241品目(※2023年10月26日時点)の伝統的工芸品を都道府県ごとに紹介する連載シリーズです。いきなり全241品目に目を通すのは大変だと思うので、まずは自分の地元の伝統的工芸品を知るところから始めてみるのはどうでしょう。

第3回は岩手県編!それでは早速見ていきましょう!

この記事の目次

経済産業省が指定する伝統的工芸品とは

地元の伝統的工芸品を知る前に、「伝統的工芸品とは何か」というところから説明していきます。まず、「伝統工芸品」とは長年受け継がれている技術や技法を用いて作られた工芸品のことをいいます。その数は各都道府県で指定されているものだけでも1,300品目を超えています。指定に統一のルールはなく、各自治体が独自のルールを設けて指定しています。
一方「伝統”的”工芸品」とは昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣の指定を受けた工芸品を指します。

詳しくは第1回の北海道編で紹介していますので、そちらをご覧ください。

岩手県の土地特性

岩手県の面積は1万5280㎢で、北海道に次いで全国で2番目に広い県です。その80%を山林が占めている自然豊かな県でもあります。宮古市より北は隆起海岸、南側は入り組んだリアス式海岸であり、美しい景勝地として国立公園に指定されています。

カエルくん

黒潮と親潮が交わる三陸沖合は世界有数の漁場として有名だよね!

経済産業省が指定する岩手県の伝統的工芸品

岩手県には南部鉄器(なんぶてっき)、秀衡塗(ひでひらぬり)、浄法寺塗(じょうぼうじぬり)、岩谷堂箪笥(いわやどうたんす)の4品目の伝統的工芸品があります。4つ全ての伝統的工芸品に漆が使われているのが岩手県の伝統的工芸品の特徴の一つです。2021年、漆産業の拠点である浄法寺に隣接する一戸町の御所野遺跡が「北海道・北東北の縄文遺跡群」の一部として世界文化遺産に指定されました。

南部鉄器(なんぶてっき)

出典:東北経済産業局|https://www.tohoku.meti.go.jp/s_densan/html/item/iwate_01.htm

南部鉄器でお湯を沸かすと、人に吸収されやすい2価鉄という鉄が溶け出します。さらにお湯がまろやかになり白湯でも美味しいということが科学的にも実証されています。近年では鉄瓶や急須の他にフライパンやキャンドルスタンド、カラフルな南部鉄器がヨーロッパを中心に人気になるなど、241品目ある伝統的工芸品の中で国内外において人気・知名度が高い品目の一つです。

主な産地

告示

■技術・技法
1鋳型造りは、次の技術又は技法によること。
(1)砂型であること。
(2)溶湯と接する部分の鋳物砂には、「真土」を用いること。
(3)鋳型の造型は、「挽き型」又は「込め型」によること。
(4)「挽き型」による場合には、鋳型の表面に「紋様押し」又は「肌打ち」をすること。
(5)鋳型の焼成又は乾燥(「肌焼き」を含む。)をすること。
2鋳物の表面は、漆及び鉄しょうを用いて着色をすること。
3料理用具として用いられるものにあっては、「金気止め」をすること。
■原材料
1鋳物の素材は、砂鉄又は鋳物用銑鉄とすること。
2着色剤に用いる漆は、天然漆とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0701/

分類

金工品

指定年月日

1975年2月17日

秀衡塗(ひでひらぬり)

出典:翁知屋 https://ochiya.jp/hidehiranuri/

岩手県民は箸・椀・菓子鉢などの何か一つ、秀衡塗を持っている」といわれるほど、岩手県民にとって秀衡塗は身近なものです。平安時代末期に平泉で栄えた奥州藤原氏第3代当主・藤原秀衡(ふじわらのひでひら)が京都から呼び集めた職人に平泉周辺で採取できる漆や金を使って器を作らせたのが始まりだと言われています。

主な産地

告示

■技術・技法
1木地造りにおいて、椀にあっては、その型状は、次の技術又は技法による「秀衡型」とすること。
(1)口縁部は、「内すぼまり」とすること。
(2)身部は、「丸み」をつけること。
(3)高台部は、「末広がり」とすること。
2下地造りは、次のいずれかによること。
(1)「本堅地下地」にあっては、麻または寒冷紗を用いて、「布着せ」をした後、地の粉を用いた「地付け」、地の粉と砥の粉を混ぜあわせたものを用いた「切り粉付け」及び「さび付け」をすること。
(2)「漆地下地」にあっては、精製生漆と精製黒中塗漆を混ぜ合わせたものを塗付しては水研ぎをすることを繰り返すこと。
3塗漆は、次の技術又は技法によること。
(1)「下塗」及び「中塗」をすること。
(2)「上塗」は、花塗又はろいろ塗とし、椀にあっては、外黒内朱とすること。
4加飾は、「雲地描き」、「箔貼り」及び「漆絵」による「秀衡模様」とすること。
■原材料
1漆は、天然漆とすること。2木地は、次のいずれかによること。
(1)挽き物にあっては、ケヤキ、ホオ、トチ、ブナ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
(2)指物にあっては、ケヤキ、ホオ、ヒバ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
3加飾に使用する箔は金とし、金の純度は、1,000分の966以上とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0502/

分類

漆器

指定年月日

1985年5月22日

浄法寺塗(じょうぼうじぬり)

出典:岩手県二戸市浄法寺総合支所 漆の郷づくり推進課|https://urushi-joboji.com/life/use#care

浄法寺塗は光沢を抑えた無地のものが多いです。使うごとに艶が増していき、修理や塗り直しをしながら世代を超えて使い続けられる、まさに育てる漆器といえるでしょう。奈良時代に浄法寺町天台寺の僧たちが寺で使う器を作ったのが始まりと言われています。

主な産地

告示

■技術・技法
1下地造りは、次のいずれかによること。
(1)「蒔地下地」にあっては、精製漆を塗付し、地の粉又は炭粉を蒔付けた後、精製漆を用いて「粉固め」をすること。
(2)「漆地下地」にあっては、精製漆を塗付しては水研ぎをすることを繰り返すこと。
2塗漆は、次の技術又は技法によること。
(1)「下塗」及び「中塗」をすること。
(2)「上塗」は、花塗又はろいろ塗とすること。
3加飾をする場合には、「漆絵」、「粉蒔絵」又は、「南部箔絵」によること。
■原材料
1漆は、天然漆とすること。
2木地は、次のいずれかによること。
(1)挽き物にあっては、ケヤキ、ホオ、トチ、ブナ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。
(2)指物にあっては、ケヤキ、ホオ、ヒバ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0503/

分類

漆器

指定年月日

1985年5月22日

岩谷堂箪笥(いわやどうたんす)

出典:岩谷堂タンス製作所 https://www.its-iwayado.jp/

ケヤキ・キリ・クリの板材を材料として、漆で塗装をした表面に、鉄や銅の手彫りや南部鉄器製の鋳物金具があしらわれています。ケヤキ・漆・鉄の産地であり、古くからタンス作りの環境が整っていましたが、明治時代にタンスが一般家庭に広まる頃に、北上川の水運を利用して東北各地に出荷されていきました。

主な産地

告示

■技術・技法
1木材の乾燥は、自然乾燥及び強制乾燥によること。
2使用する板材は、無垢材とすること。この場合において、板材の厚さは、天板、側板、たな板、束板、かんぬき、地板及び台輪にあっては18ミリメートル以上(「姫箪笥」に使用する場合は、16ミリメートル以上)、裏板にあっては6ミリメートル以上とすること。
3木地加工は、次によること。
(1)本体の箱組みは、次の技術又は技法によること。イ側板に対する天板の接合は、5枚組以上の前留め組み接ぎ、前留めあり組み接ぎ又は留形隠しあり組み接ぎにより、側板に対するたな板の接合は、包み片胴付き追入れ接ぎ、包みあり形追入れ接ぎ又は剣留め両胴付き追入れ接ぎにより、側板に対する地板の接合は、5枚組以上の組み接ぎ又は包み打付け接ぎにより、側板に対する裏板の接合は、包み追入れ接ぎによること。ロ天板、たな板及び地板に対する束板の接合は、包み片胴付き追入れ接ぎ又は剣留め両胴付き追入れ接ぎにより、束板に対する裏板の接合は、平打付け接ぎによること。ハ天板に対する裏板の接合は、包み追入れ接ぎにより、たな板、地板に対する裏板の接合は、平打付け接ぎによること。
(2)引出しに使用する板材は、無垢板又は化粧板張りとし、化粧板は、厚さ3ミリメートル以上の挽き板とすること。この場合において部材の接合は、包み打付け接ぎ、包みあり組み接ぎ、組み接ぎ又は片胴付き追入れ接ぎによること。
(3)とびら又は引戸を付ける場合には、次の技術又は技法によること。イ板物にあっては、板材は、厚さ18ミリメートル以上(「姫箪笥」に使用する場合は、16ミリメートル以上)の無垢板又は化粧板張りとし、化粧板は、厚さ3ミリメートル以上の挽き板とすること。この場合において、部材の接合は、本ざね留め端ばめ接ぎによること。ロ枠物にあっては、板材の厚さは、枠板にあっては18ミリメートル以上(「姫箪笥」に使用する場合は、16ミリメートル以上)、鏡板にあっては6ミリメートル以上とし、枠の部材の接合は、留形やといざね接ぎ又は留形挽き込み接ぎにより、枠板に対する鏡板の接合は、段欠き打付け接ぎ又は片胴付き追入れ接ぎによること。
(4)台輪を付ける場合には、台輪の四方の角の部材の接合にあっては留形片桐付き追入れ接ぎ又は包み片胴付き追入れ接ぎにより、根太の接合にあっては追入れ打付け接ぎによること。
4塗装は、次の技術又は技法によること。
(1)ふき漆塗にあっては、生漆を繰り返し塗付した後、精製生漆又は透漆を用いて「仕上げふき」をすること。
(2)「木地呂塗」にあっては、クロメ漆を用いて下塗をし、木地呂漆又は呂色漆を用いて上塗した後、上塗研ぎをし「胴摺り」をすること。
5金具の製造は、次の技術又は技法によること。
(1)使用する地金の厚さは、0.8ミリメートル以上とすること。
(2)「鏨彫り」は、手作業により彫り鏨を用いて行うこと。
(3)「打ち出し」は、手作業により木台及び金鎚を用いて行うこと。
(4)蝶番、錠及び鍵作りは、手作業によること。
(5)引き手作りは、手作業により「わらびて型」、「もっこ型」、「ひるて型」又は「角手型」に鎚打ちし成形すること。
(6)さび止めは、焼いた金具に動物性繊維をすりつけた後、ろうを塗り布で磨くこと。
(7)色仕上げは、生漆を塗付し焼き付けること。
■原材料
1木地は、ケヤキ、クリ、キリ、スギ、ニレ、タモ、キハダ、セン、カツラ若しくはホオ又はこれらと同等の材質を有するものとすること。
2くぎは、「ガマズミ」製又はこれと同等の材質を有するものとすること。
3漆は、天然漆とすること。
4金具は、鉄製とすること。

伝統工芸 青山スクエア https://kougeihin.jp/craft/0602/

分類

木工品・竹工品

指定年月日

1982年3月5日

一度は行きたい関連施設

岩手県には4つ伝統的工芸品があるのが分かりました。また岩手県といえば、平安時代後半に奥州藤原氏が栄え、高度な漆技法を駆使して作られた中尊寺金色堂が有名です。そんな岩手県に訪れたらぜひ行きたい中尊寺金色堂や、その他の岩手の伝統工芸を体験できる施設をご紹介します。

中尊寺金色堂

出典:関山 中尊寺|https://www.chusonji.or.jp/index.html

金色堂は中尊寺創建当初の姿を今に伝える建造物で1124年(天治元年)、奥州藤原氏初代清衡公によって上棟されました。東日本随一の平安仏教美術の宝庫と称され、2011年(平成28年)に中尊寺を含む「平泉の文化遺産」が世界文化遺産に登録されました。

盛岡手づくり村

出典:盛岡手づくり村|https://tezukurimura.com/

盛岡手づくり村は、手づくり工房・南部曲り家・盛岡地域地場産業振興センターの3つのゾーンで構成される複合施設です。手づくり工房では制作風景を見学できたり、体験教室も行っております。体験教室は種類も豊富で、陶器教室や竹細工教室、冷麺づくり教室などが開催されています。

岩鋳鐵器館

出典:東北電力|https://odecafe.tohoku-epco.co.jp/article/305

岩鋳鉄器館は、南部鉄器の展示ギャラリーと、実際の鉄器の製造プロセスを間近に見ることができるテーマパーク型工場です。展示ギャラリーは岩手県内一の品揃えを誇ります。最近では海外からの見学客も増えてきているそうです。

稲庭交流センター天台の湯

出典:稲庭交流センター天台の湯|https://tendainoyu.co.jp/stay/#urushi

稲庭交流センター天台の湯には1日2室限定で、二戸市浄法寺産の漆を使用した和室「うるしの部屋」に宿泊することができます。「天台の湯」は天台寺名誉住職・瀬戸内寂聴さんが命名したもので、「うるしの部屋」にも実際に宿泊されたことがあるそうです。

最後に

岩手県編、いかがでしたでしょうか?

2020年12月に「漆搔き技術」が「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録されました。国産漆の生産量のおよそ82パーセント(2021年実績)を、岩手県北部で生産されており、その高い品質でも知られており、日光東照宮などの貴重な文化財の修復にも使われています。漆が生活に深く浸透している岩手県で「漆」を身近に感じてみてはいかがでしょうか。

カエルくん

浄法寺塗を施した部屋やテーブル、食器で提供してくれる飲食店も岩手県にはたくさんあるみたい!

参考サイト/文献
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